ギルドの依頼なんて、俺様にはどうでもいい。


全ては、セリナの決意を応援するため。


……けれど、



「セリナ、お前は本当にこれでいいのか?

お前が苦しむ事が、本当にお前の贖罪になるのか……?」



俺様は聞こえないと知りつつ、ぽつりとセリナに問いかけた。


胸の中で荒い息をする彼女はとても苦しそうで、白い額には汗が滲んでいる。


――人の『負』の感情を吸収したあと、セリナはいつもこうだ。


もちろん、強い『負』の感情を吸収すればする程、セリナに負担がかかるのは道理。


なのだが――



「……ったく、この馬鹿。俺様の気も知らないで」



俺様は舌打ち混じりに呟きながら、自らの魔力をセリナに送る。


普通ならば魔力を他者に譲渡する事は不可能なのだが、俺とセリナは契約関係にある。


よって、俺様とセリナの魔力によって生成された《龍玉》を媒介にすれば、魔力を送るだけではなく、感情や視覚をリンクさせるなど――あらゆる事が可能となるのだ。


そして長い付き合いから、俺様の魔力を送ることでセリナを蝕む『負』の魔力を緩和させることができるのも知っている。


俺様は早くセリナの震えが消える事を願いながら、震えるその小さな背中をさすってやるのだった。



【第一章 転校 終】