……こんなにも人間らしいクリュウだが、彼は決して人間ではない。


彼の本当の正体は、世界を構成する6元素の1つ――《雷》を司る黄金龍。


そして、私と契約を交わした召喚獣でもある。



「セリナちゃーん!リョウせんぱーい!」



私がクリュウを引きはがそうと四苦八苦していると、こちらへ駆け寄ってくる小柄な影が目に入った。


リタさんだ。



「セリナちゃん、おめでとう!ケガとかしなかった!?」


「うん、なんとか。心配してくれてありがとう」


「どういたしまして!リョウ先輩も……うん、大丈夫そうだね!」


「当然だ。この俺様の狙いが外れるわけがないだろう」



リタさんと笑顔で話していると、クリュウが会話に割り込んできた。


そんなクリュウに、リタさんは戸惑ったような表情を見せる。



「えぇと……セリナちゃん、そちらの方は?」


「ふん。自分から名乗ろうとしないヤツに名乗る名前ではない」


「ちょ、クリュウ!?」


「……そうですね、失礼しました。私の名前はリタ・エルルージュです!どうぞよろしくお願いします!」



傍若無人なクリュウの態度に、嫌な顔ひとつせずに応じるリタさん。


さすが、無自覚に逆ハーレムを築き上げるだけある。


そしてクリュウは、



「……俺の名前はクリュウ。セリナと共によろしく頼む」



と威厳たっぷりに言いながら、私を抱きしめる腕に力を込めた。どうやらリタさんの事を気に入ったらしい。


そのまま私たちは、リョウ先輩が補助科の生徒によって保健室へ無事運ばれるまで話し続けたのだった。