――正直、俺はセリナと付き合っていることが信じられない。


セリナの周りには、俺の他にもサクヤやシェイドがいるのだ。


彼らは俺なんかより優しいし、セリナを女子として扱っている。


それなのに、どうして俺なのか……。



(……らしくねぇな。自分に自信が持てないなんて)



俺は小さく息を吐き、夜空に瞬く星を見上げた。


何を迷う必要がある。自信がないなら、自信をつければいいだけの話しだ。


そのために、まずは――


俺は、少し上にあるセリナの顔を見つめる。



「え、えぇと、でもですねっ!リョウ先輩と手をつないでるのは幸せっていうか、ドキドキするというか、もっと一緒にいたくなるというか……!」



しどろもどろになって言葉を紡ぐ彼女には、今俺がどんな表情をしているか分からないようだ。



(ちょうどいい)



俺は不敵に笑うと、彼女の手を下に引いた。


突然の事に対応できなかったセリナの身体が、俺の方へ傾く。


そうして触れたセリナの唇は――思った以上に柔らかく、甘かった。



「……覚悟しろよ、セリナ」



呆けた顔でこちらを見つめるセリナへ、自信満々に笑って言い放つ。



「これは戦線布告だ――もう離れられないっておもうほど、俺に惚れさせてやるからな」



高校3年生の、夜空の下。


俺は真っ赤な顔で頷いた彼女へ笑いかけると、もう一度甘いキスを落としたのだった。



【第五章 転変 終】