「……だ、誰が?誰をですか?」
「俺が、お前を好きなんだ」
『好き』という言葉が耳元に落とされるたびに、体中に甘い熱が宿る。
絶句した私の髪を優しく撫でて、リョウ先輩はぽつぽつと話し始めた。
「本当は……お前から距離を取られた事にひどく驚いたし、傷つきもした。
俺はセリナに嫌われるような事をしたんだろうか、と悩んだりもした。
そうしたら昨日、ヒースと笑いながら歩いてくるセリナを見つけて……自分でも驚くくらい、すげぇ嫉妬したんだよ」
格好悪いだろ、と言ってリョウ先輩は自嘲気味に唇を吊り上げた。
それを聞いた私は、思い切り首を横に振る。
「そんな事ないですっ!むしろ、すごく……」
……すごく?
自分が何を言おうとしているのか分からず、私は思わず口をつぐんだ。
すると、リョウ先輩が小さく囁いてくる。
「……それで、お前はどうなんだ?」
「え……?」
「俺は、お前の事が好きだと告白した。ならお前は?
セリナは、俺の事をどう思っているんだ?」
不安そうに揺れる声を聞いて、私は俯いていた顔を上げた。
こちらを窺う赤い瞳を見た瞬間、胸が甘く痛みを伝えてくる。
――不意に、リタから貸してもらった恋愛小説の一節が頭に浮かんだ。
鈍感な主人公が、女友達のアドバイスを受けて自分の気持ちを自覚するシーン。

