(……えぇい、女は度胸!やらない後悔よりはやってからの後悔だ!!)



半ばヤケクソになりながら、私は息をひそめて先輩を見つめた。


黒と赤の髪がこすれあい、サラリと音を立てた。


その音にさえビクビクしながら、私は慎重に顔を近づけていき――


ふと、気がついた。



(……あれ?)



そっと目を開けば、そこにあるのは相変わらず綺麗な先輩の顔。


しかし、よく耳を澄ませると……その口から、微かだが吐息が漏れているのが聞こえてきた。



「………………」



私は無言で立ち上がると、リョウ先輩から3メートルほど離れた場所まで静かに後ずさった。


そして、その場で正座をすると――



「す、すみませんでしたぁぁぁぁあああああああ!!!!」



意識のない彼に向かって、全力で土下座したのだった。