「え、う、嘘ですよね先輩……!」
ドクン、と心臓が嫌な音を立てる。
私は目の前が真っ暗になるのを感じながら、リョウ先輩の肩を揺すった。
(そんな……リョウ先輩が【魔法耐性】の上級を自分にかけてるところ、確かに見たはずなのに!)
うろたえながら、私は緊急処置を開始した。
倒れたリョウ先輩を中心に白い魔方陣を展開させ、【治癒】の魔法を行使する。
それでも、先輩は目を開かない。
「どうしよう……!」
焦った私は、自分が苦しい時にいつもクリュウにやってもらっていた事を思い出した。
汚れた自分の魔力を使って辛くなった時、いつもクリュウがやってくれたのは……
「……キス?」
思いついたのは、唾液を媒介とした直接的な魔力補充。
思わず自分とリョウ先輩がキスしているところを想像した私は――真っ赤になってぶんぶんと首を横に振った。
「な、何を考えてるの私!」
そもそも、魔力の譲渡なんて私とクリュウが契約していたからできた事なのだ。
先輩にやっても恐らく効果はないし、なにより恥ずかしすぎる!
「で、でも……」
私は顔が熱くなるのを自覚しながら、リョウ先輩の綺麗な顔をジッと見つめる。
(このまま、意識が戻らないくらいなら――!)
緊張で口内が渇き、それを潤おそうと唾を飲み込めば喉がゴクリと鳴った。
暴れだす心臓が静かになるように念じながら、整ったその顔を挟むように手をつく。