「あの、ガンツ先生。この箱型の乗り物は一体?」


「教師のみ使用可能な移動専用機械。名前は『バスモドキ』だそうだ」


「……はぁ」


「学園長の発明品。ちょうどいいから使っている。それが?」


「……いえ、なんでもないです」



説明してもらって申し訳ないのだが、正直よく分からない。



(……ま、動いてるからいいか)



とりあえず曖昧な返事を返して、俺は思考を放棄した。


――そして、10分ほど経過した頃。



「着いたぞ」



そんな短い一言と共に、『バスモドキ』はゆっくりと停止した。


声をかけられた俺たちは、自らの武器を持つと静かに光の方へ歩き出した。


ガンツ先生を先頭に、鬱蒼と茂る草を跳ね除けて前へ進む。


そうして、ようやく光の柱の前までやってきた時――その脇で立ち尽くす、長い黒髪の少女を発見した。


黒い服をまとった彼女は、ただ静かに魔力を発する柱を見つめている。


俺たちには気付いていないようだ。



「――セリナさん!!」



誰よりも先に声を上げたのは、アレンだった。


その声に反応した彼女は、ゆったりとした動作でこちらを見つめる。


一切の感情が抜け落ちた顔。


虚ろな『赤黒い』色をした瞳がこちらを見つめる。


そして。



「……アハッ」



次の瞬間、その唇からもれたのは嘲笑だった。