あれだけの『負』の魔力をその身に抱え込んでいるのだ。恐らく、彼女の魔力は完全に汚染されているだろう。


少しだけ魔力を交換したところで、汚染された魔力は彼女の中に残り続ける。


そして、瀕死状態である今の彼女にとってそれは害悪でしかない。


だから、完全に彼女の魔力を奪う代わりに――俺様の魔力を供給する。


幸い、俺様も魔力なら持て余すほど存在している。彼女一人の分を供給したところで、どうという事はないだろう。


俺様は、最大限に開けた口を閉じると同時に、彼女の持っていた魔力を全て奪い取り、代わりに俺様の魔力を送り込んだ。



『わ……っ!』



驚いて見開いた彼女の瞳の色が、俺様の魔力に反応し、汚染された魔力と同じ――深紅から黄金へと変わっていく。


それを見届けた俺様は、彼女から奪った魔力と俺様の魔力を混ぜ合わせ、《龍玉》を作る作業に入った。


《龍玉》は、龍との契約の証であると同時に、お互いの魔力を同じ場所に封じ込める事で、互いの魔力を同調させる効果を持つ。



(こいつの魔力も、いつか俺様の魔力と混ざりあって中和される時が来るんだろうか)



俺様は心の中でひとりごちながら、黒みがかった赤色の《龍玉》を見つめた。


そこで、ふと重大な事に気づく。



『なぁ、お前……名前は?』



俺様の問いかけに、彼女は驚いたように目を見開いて。


それから、



『……セリナ』



そう言って、少し悲しそうに微笑んだのだった。



***