(……なんだ?この村は)



どうやら、この村は破壊されたばかりらしい。まだ新しい血のにおいが鼻を覆い、思わず俺様は顔をしかめた。


精霊たちの言っていた【アノコ】というのは、この村の住人の事だったのだろうかと考えながら、何気なく後ろを振り返る。



すると――真紅の瞳と目が合った。



『……お?』



生きている人間がいると思っていなかった俺様は、そちらの方をジッと見つめた。


――真紅の瞳の持ち主は、まだ年端もいかぬ少女だった。


漆黒の髪と、病的なまでに白い肌。着ている衣服は血でグッショリと濡れている。



(この状況で、よく生きてたな……)



俺様は半ば呆れながら、少女の方へと一歩近付いた。


それと同時にさらに禍々しくなった空気に、俺様は気付いてしまった――先ほどから感じていた『負』の力の中心が、彼女であったことに。



(まさか、精霊たちの言ってた【アノコ】ってこいつか!?)



俺様が驚いていると、少女は口を開けた。


そして、ポツリと一言。



『……可愛い』


『……は?』



予想外の出来事に、俺様は不覚にも硬直してしまった。


可愛い?俺様が?


本来の姿である龍の形を取っている俺様を見て、恐れるでも怖がるでもなく、『可愛い』だと!?