そして、リタの言っていたゲーム設定と現実世界で違ったのは、私と契約する時のクリュウについて。
ゲームでは、クリュウは私と契約する時に瀕死状態だったという設定だったそうなのだが、私の記憶ではクリュウに傷なんて一つもなかったハズなのだ。
(まぁ、ゲーム知識を思い出したリタが龍の保護を積極的にやってたとか言ってたし、もしかしたらそれで何かが変わったのかもね)
どっちみち、私には分からないけど。と一人呟きながら、私は胸元から《龍玉》を取り出した。
淡く金色に光るそれは、クリュウとの契約の証。
そして、私とクリュウを魔力で繋ぐもの。
(もしも、クリュウと契約した状態で私の魔力が暴走してしまえば、リタの言った通りクリュウにも影響が出てしまうだろう)
けれど、もしも私がクリュウと契約を結んでいない状態なら?
クリュウは、助かるのでは?
(……やってみるしかない)
私はそう決意すると、《龍玉》をつまむ指に力を込めた。
硬いと思っていた石は、私が指先に魔力を送り込むだけで簡単にヒビが入っていく。
(さよなら、クリュウ。……いや、クリューソス)
心の中で彼の真名を呼ぶと同時に、光を失った《龍玉》が砕け散る。
瞬間、膨大な魔力を含んだ風が魔の森を吹き荒れた。
【第三章 転生 終】