物心ついた時、セリナは山奥の小さな村で育てられていた。


村の人の態度から、私が拾われ子だという事はなんとなく理解していたけれど、接してくれる人はみんな優しかったからあまり気にしていなかった。


そうして、セリナが8歳になった頃。


村の人間は全員身内だと言い切れるくらいには村のみんなに懐いていた時、セリナの運命は大きく変わる事になってしまった。


――始まりは、村人の一人が農作業中に指を切ったことだった。


それにいちはやく気付いたセリナが、その血をペロリと舐めたのだ。


……村の中では、応急処置として『血を舐める』という行為は当たり前だったので、誰もその行動を不審がるものはいなかった。


しかし、セリナが指を舐めた直後にその村人が失神してしまったのには、さすがに誰もが驚いたが。


さらに、倒れてしまったその村人は、無事に目を覚ました直後こう言ったのだ。



『セリナに血を舐められた瞬間、心に溜まっていた農作業に対する不満が無くなったのが分かった』