「こんな事、誰も信じないだろうなーって思ってたけど、まさかアレン君も転生者だったとは。

現実ってホント、何が起こるか分からないね」



私はそう言うと、頬をかきながら苦笑してみせた。


対するセリナちゃんは、苦々しい表情で何かをジッと考え込んでいる。


その表情を見て、私は自分の心が沈んでいくのを感じた。



(……そりゃそうだよね。セリナちゃんが死ぬとかクリュウ君が死ぬとか、そんな不吉な事ばっかり言う女なんて不気味だしね。しかも、証拠なんて無いんだし)


しかも私の行動は、セリナちゃんの恋について大きく関係している。大きなお世話だと思う部分もあるかもしれいし……。


そんな事を考えていると、不意にセリナちゃんが立ち上がった。


そして、何を言われるかとビクビクしている私を――優しく、抱きしめてきたのだ。



「……へ?」


「リタ、ごめんね」



何が起きたか分からず呆然とする私を、ぎゅっと抱き締めるセリナちゃん。


その手は、声は、とても暖かい。



「リタは、ずっと前から私の事を助けようと一人で頑張ってくれてたんだね。私やクリュウの事を見捨てて、別の学校に進学したりしても良かったはずなのに」


「……ぇ」


「私のために、人生の何年かを損させちゃったよね。ごめんなさい。

でも、本当に本当に……ありがとう」



セリナちゃんが、私の頭をゆっくりと撫でた。


その暖かな手から、労わりの気持ちが伝わってくる。



『ありがとう』



耳元で繰り返される言葉。


その言葉に私は、今まで頑張った事が全て報われたような気がして――。



「せ、セリナちゃ……」


「……泣いていいよ。……ずっと、私とクリュウのために努力してくれて、ありがとう」


「……う……うぅっ……!」


「リタの思いも、行動も、絶対に無駄にしないから」


「……うん…………っ!」


温かい腕に包まれて、私は久しぶりに大泣きしたのだった。