まず、彼が攻略対象として組み込まれていなかった事。


主人公を昔から見守ってきた存在であり、いつフラグが立ってもおかしくないキャラであるにも関わらず、クリュウに関しては攻略イベントが一切無かったのだ。


そしてもう一つは、各攻略キャラでハッピーエンドを迎えた後の会話について。


結婚式には、当然の如く他の攻略対象やサポートキャラであるリタが出席しているのにも関わらず、契約関係であるクリュウだけ全く存在していなかったのだ。


しかし、その疑問は『トゥルーエンド』と名付けられた隠しルートによって解決する事になった。


ただし、非常に嫌な形で。


――『トゥルーエンド』は、全ての攻略対象でハッピーエンドを迎えた後にメニュー画面に追加される仕様となっていた。


その内容は、全攻略キャラと友人以上恋人未満を維持する『逆ハーレムエンド』。


選択肢はなく、ノベルゲームのような状態で全キャラとの仲も順調に進んでいく。


そして、通常のルートでは死ぬ可能性があった『主人公の魔力の暴走』も、全員に取り押さえられて無事に生き残る事ができた。


そこで終われば、ハッピーエンドとして締めくくる事ができたのだろうが……製作者は、そうしなかった。


あろう事か、全員でセリナの無事を祝っていたその時――今度はクリュウが暴走し、破壊を司る《闇龍》へと堕ちてしまうのだ。


契約主であるセリナの魔力が穢れた影響が、二人を繋ぐ《龍玉》を通してクリュウを蝕む結果となったのだ。


彼らはもう一度力を合わせ、死闘の果て――ついにセリナの一撃によってクリュウへ止めを刺す事に成功する。


契約関係であり、今まで相棒としてやってきたクリュウをその手で殺したセリナは、その場で泣き崩れる。


そんな彼女に、束の間意識を取り戻したクリュウは言い残すのだ。



『ありがとう。……どうか幸せに』



と。