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【リタSide】



その記憶を思い出したのは、私が5歳になった頃。


一歳年下のシェイドと追いかけっこをしていた時、足を滑らせて派手に転倒したのがキッカケだった。


思い切り打った頭を押さえて呻く私に、とても心配そうな表情をして駆け寄ってくるシェイド。



『ねーちゃ、大丈夫?』



しかし――青い宝石みたいにキラキラ輝くその瞳を見た瞬間、私が感じたのは頭痛だった。


同時に、シェイドの姿が二重にブレる。


垣間見えたのは、……信じがたいことに、シェイドが成長した姿。



『…………ぐっ!?』


『ね、ねーちゃ!ねーちゃ!?』



その姿を見て、さらにひどくなる頭痛。


慌てふためくシェイドに大丈夫だと言い聞かせながら、私はギュッと目をつぶった。


視界が、世界が、一瞬だけ闇色に染まる。


その、瞬間――



『頑張ってね』



少し低い……けれど確かにシェイドのものである声が頭に響き、私はそのまま意識を失った。


そしてその後、3日3晩高熱を出して寝込んだ私が目を覚ました時には――『前世の記憶』というヤツをすっかり思い出していた。