『クリュウ、緊急事態!はやく戻ってきて!』



私は心の中で呼びかけながら、素早く周囲に視線を走らせた。少し遠くから、複数の足音が近づいてくるのが分かる。


だけど、クリュウならきっと――と思った私は、次に聞こえた彼の返事に耳を疑った。



『悪い、こっちも緊急事態だ!そっちでなんとかならないか!?』


『嘘でしょ!何があったの!?』


『さっきよりも大量の魔獣が発生してる!しかも、一匹でも仕留め損ねたらそっちにまで被害が出そうな勢いだ!』


『……ッ!』


その報告に、私は思わず絶句した。


しかし同時に、一つの疑惑が思い浮かぶ。



(最初からおかしかった、大型魔獣の大量襲撃。しかも、このタイミングで私たちの方へ向かって襲い掛かってきている。

と、いう事は……!)



頭の中で仮説を立てながら、私は制服のポケットから一枚の『符』を取り出し、右手で握りこんだ。


その時。