想ったって無駄な事はわかっている。

千秋にはもう、彼氏がいた。

話はよく覚えていないけど、ノロケてたくらいだから、上手くやってるんだろう。

俺の付け入る隙なんてどこにもありはしない。

その上、分かれ際のあの俺の態度。

…千秋は、ショックを受けていた。

きっと何で怒られたのかわからないまま、しょんぼりしていたんだろう。

それを思うと、ますます自己嫌悪に陥った。

「最低だな…俺…」

一人、小さく呟いてみる。

最低、という言葉はじわじわと胸の中に広がり、俺の事を責め立てる。

不覚にも泣きそうになって、腕で顔を隠した。

…別に誰も見ていないのにな。

それでも、泣くのは嫌だった。

また子供の頃を思い出す。

喧嘩に負けて、泣かされた俺を心配そうに覗き込む千秋の姿。

千秋には、みっともないとこ見られてばっかりだった。

…違うか。

千秋が見ていなくても、何だか俺はみっともないよな…。