「そう言えばトモは?」

「トモは先に行ってるよ」

走りながら千秋が言う。

トモというのは、千秋の一つ下の弟、智也の事。

泣き虫で、気が弱くて、普段はいつも千秋と一緒に行動しているのに。

「きっと気に入ったんだよ、秘密基地!」

千秋がニカッと笑う。

昨日のうちに、秘密基地には千秋の家と俺の家から、厳選した玩具を運び込んでおいた。

まさに宝の山になっている。

トモはそれが目当てで、先に行ったんだろう。





幼馴染みの俺達三人は、いつでも一緒だった。

学校に行くのも遊びに行くのも、いつも一緒。

夏休みにでも入ろうものなら、家族か兄妹かというくらいの長い時間を過ごした。

昨日だって、千秋の両親に連れられて、近所の夜店で一緒にお小遣いを散財してきたし、その前はこれまた近所のお寺でかくれんぼして遊んで、最後までトモに見つかる事のなかった俺は、何回も連続でトモに鬼をやらせてしまい、泣かしてしまったりもした。

千秋の親と俺の親も仲がいいので、本当に家族みたいな間柄。

一緒にいるのなんて、本当に当たり前の事だった。