そんな多忙な日々も、少しの間、一息つけるようになった。

中学三年の冬の終わり。

俺は何とか高校に合格し、やっとのんびりできる時間を与えられていた。

卒業式を終え、新しい生活の準備を整えつつあった三月の事。

…チャイムの音に、俺は二階の部屋から叫ぶ。

「母さーん!お客さん!」

しかし、母さんからの返事はない。

「あ、そっか…」

買い物行くって声が、なんか一時間ほど前に聞こえたっけ。

音楽聞いてたから、いい加減な返答しかしなかったんだけど。

誰か来るから、ちゃんと出てね、なんて言ってたなー。

チャイムは続けて二、三度鳴る。

さて、誰が来るって言ってたっけ。

そこの所はイマイチよく聞こえなかったので分からない。

「はいはい、ちょっと待って下さーい」

階段を下りながら呟いて。

「どちら様ですか?」

ドアを開けると。

「こんにちは」

そこには千秋とトモが立っていた。