放課後になり、誰もが帰宅や部活の用意を始めていた。

郁哉は野球部で、航平はサッカー部に所属している。
あと1ヵ月で高校最後の試合が始まる。
そのため、部活に所属している生徒の意気込みは半端ではなかった。
雫の通っている高校は進学校であるが、部活動も熱心に取り組んでいるため、スポーツ推薦で入学してくる人たちも多かった。

雫は放課後のグランドを教室の窓から眺めていた。
グランドには野球部とサッカー部がメインで使っており、その端で陸上部が使っていた。
雫はグランドで準備体操をしている郁哉の姿を見つめていた。

この学校に入学して驚いたことは、郁哉がいたことだった。
しかも、同じクラスだった。
雫は、できるだけ中学が一緒だった人たちがいない高校を選んだつもりだった。
しかし、よりによって小さい頃から自分のことを知っている郁哉と同じ学校になるなんて思いもしなかった。
郁哉は中学から野球を始めたが、もともと運動神経がいい郁也は直ぐにエースになり、野球では有名になった。
だから、雫は野球の強い高校に進学すると勝手に決めていた。


雫は自分の黒いリュックを背負うと静かに教室を出た。


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帰りの電車の中で地べたに座っている男女の高校生たちがいた。
それを嫌そうな顔で見つめる大人たちはたくさんいるけど、誰も注意をしようとはしない。
現在では、大人より子供のほうが上なのだ。

雫は電車から降りると、電車に乗り込む人混みに目を向けた。
半分以上が10代の若者だった。

現在の世界では、『若者が増える=働く者が増える』のではなく、『若者が増える=犯罪者が増える』となっている。



それが今の世界である。