今まで話していた友人の名前は佐々岡優李といい、今雫と一緒に昼食を食べている堂島郁哉と稲葉航平は雫と同じクラスである。
しかも、郁哉は雫の幼馴染みでもあり、班も同じであった。
雫にとって、郁哉と航平は優李の次にクラスの中で信頼している友人だった。

「あぁ。せっかく優李と2人だけの場所だったのに、うるさい奴らに見つかった。」

雫は口を尖らせながら2人に言うと、航平が雫を見ながら

「本当は寂しかったクセに意地を張るなよ。」

と言い、隣で郁哉がケラケラ笑っていた。

「ばーか。」

雫はそれだけ言うと、ご飯を口の中に運び、モグモグと食べた。

「ここの合鍵作ったの佐々岡だろ??さすがだなぁ。」

郁哉は空を見上げながら言った。

「誰にも言わないでよ。特別な場所なんだから。」

雫は呑気な郁哉を箸で差しながら言った。

「わかってるって。こんなイイ場所他の奴らになんか言うわけねぇだろ、な?」

郁哉は隣でパンを頬張っている航平に同意を求めるとニカッと雫に笑顔を向けた。
雫は半信半疑な目で郁哉を見た後、まだ半分以上残っている弁当箱に蓋をした。

「おいっ。もう食べねぇのかよ?」

雫の弁当を見ながら郁哉は言った。

「母ちゃんがせっかく作ってくれたのに食べねぇと勿体無いだろ??」

「もうお腹いっぱいだもん。」

雫はそう言いながら弁当箱を袋の中に入れようとしたら、郁哉の手が伸びてきてそれを制した。

「俺が食うよ。」

郁哉は乱暴に雫から弁当箱を取ると、弁当箱を開けて雫の食べ残しを黙々と食べた。
そんな姿を見ないように雫は横に顔を向けて遠い空を見ていた。

<また始まったか…>

そんなことを想いながら郁哉は食べていた。