「そりゃぁ、見てるだろう…。」

郁哉は立ち上がり伸びをして哲郎に言い、

「まず、コテージ探さねぇか？この広い森の中、どこにあるかわかってねぇと寝る場所確保できねぇよ。」

と哲郎と雫に向かって言った。

「そうだなっ。」

哲郎も立ち上がり、歩き始めた。

「雫。」

郁哉は雫の前まで歩き出し、雫の名前を呼んだ。
雫はゆっくりと立ち上がり郁哉に微笑むと哲郎の後を歩き始めた。

さわさわ。

風の音が聞こえる。
日差しが眩しく木々の隙間から草を照らしている。
ふっと雫は立ち止まった。
郁哉は不思議に思い、雫が見ている先に目を向ける。
そこには“皐月”というピンクの花が辺り一面に咲いていた。
雫は“皐月”の花を見ながら立ち尽くしていた。

「雫！」

郁哉は雫の腕を引っ張り、無理やりでも歩かせた。

＜“皐月”の花…。何でこんなときに。＞

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中学校の校舎に夕暮れが染まっていく。
誰もいない廊下の先の教室で生徒たちの笑い声が聞こえてくる。
郁哉はその笑い声の中、ゆっくりと階段を上がっていった。
階段を上ったとき笑い声が消え、嫌な雰囲気がここまで漂っていた。
郁哉はゆっくりとさっきまで笑い声が聞こえていた教室に足を運ぶ。
そのとき、1人の女子生徒が教室から飛び出して郁哉の横を通り過ぎていった。

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