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雫は昼休み屋上へ続く階段を1段ずつ上がっていった。
1週間前だったら、この足も軽やかに階段を上がり、屋上で気持ちよい風に吹かれながら友人と楽しく昼食を楽しんでいた。
しかし、今は違う。
毎日一緒に昼食を楽しんでいた友人はいない。
1週間前に高校を中退したからだ。

雫は友人がくれた屋上の合い鍵をポケットから取り出し、鍵穴に差し込んだ。
この合鍵も友人が、こっそり職員室から屋上の鍵を粘土で型を取り、知り合いに合い鍵を作らせたものである。

1週間前、友人がこの学校を去るときに雫に渡していった。




『もう、この場所に行くことはないから。これは雫にあげる。』




雫が鍵を廻すと、扉はカチリという音を鳴らして開いた。
風が雫の身体を吹きつけた。

<寒い…。>


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友人は5月に入って直ぐに学校を辞めた。
雫もそれを薄々感じていた。
でも、雫は黙っていた。
友人が自分から話してくれるまで気づかないフリをしていた。