こんな能力(ちから)なんていらなかった




 制止する声に振り向くことなく優羽は一直線に男に向かう。

 男はニヤリ笑ったかと思うと、その掌をこちらに向けた。
 そこから現れるおびただしい数の火の玉。狭い路地裏では逃げ場がなくなる。


 だが、甘い。


 優羽はビルの壁を蹴るとその勢いで反対側の壁も蹴り、上へと登る。

 そして、呆然とした顔の男の真上に飛ぶと、そいつが振り向く前に当て身を食らわした。

 ガクンと膝を折る男の手からはスゥッと音もなく光が消える。

 いつも思うがこれは一体どういう仕組みになっているのだろうか。


「おい、優羽!」


 見ると結界の向こうで紫音は怖い顔をしていた。
 慌てて呪符を剥がしにいく。

 そぉれと符を空間から剥がした途端に頬をブニュッと潰される。


「なんで一人で突っ込む!?」

「はって、あいふら変なひゅつはちゅかうけひょたいじゅちゅはへんで弱いし……」


 何で自分言い訳してんだろと思いながら言う。しかもこんなの誰も聞き取れないだろうに。

 と、思ったのに紫音の顔が変わったのが分かった。


「変な術?どういうことだ……?」

「え?」


 その意味を聞き取る前に優羽はハッと振り返る。


「後で聞く!」


 優羽はそれだけ言うと男の元に行きペタペタ呪符を貼って行く。

 そして、十枚ほど巻きつけるように貼ったところで携帯を取り出した。


さてと。


 優羽は特定の電話番号に電話をかける。