こんな能力(ちから)なんていらなかった




 一瞬の間の後。


 二人のいた場所がバン!と弾けた。


  一秒遅かったら、死んでいたかもしれない。


 二人とも爆風に体が少し傾いだがすぐに体勢を立て直す。


「紫音!大丈夫!?」

「平気。それより何これ」


 近くで見ていた人達が警察を呼ぶ中、沢山いる野次馬の一人、そいつ一人だけが路地裏に姿を消した。


「おい、優羽!?」


 突然走り出した優羽に面食らうが紫音もすぐさま追いかけ始める。


「紫音ついてこないで!」

「無理に決まってんだろ!」


 紫音が叫んだタイミングで優羽は足をピタと止めた。

 優羽の前方にさっきの男が立っているのが見えたからだ。
 男の顔には見覚えがある。


「カラオケ店員?」

 最初に食べ物を運んできたあの店員だった。優羽が呟いたそのタイミングで男は手を向けた。
 その手は薄っすらと光っている。


「お前今日千秋持ってないだろ!?」


 装備なしにも関わらず迷いなく男の元へ走ろうとした優羽の肩を押さえ紫音が叫ぶ。


「千秋はいないけど、大丈夫」


 紫音の腕から体を捻って抜け出す。

 そしてポッケに忍ばしておいた呪符を取り出すと。


「結!」


 紫音の前にある空間にそれを貼る。

 その札はバチンと閃光を発すると紫音と優羽を隔てるように薄い膜が張られた。

 これで紫音はもう安心だ。


「あ、おい!」