こんな能力(ちから)なんていらなかった




「どこが下手なの!?すっごいいい声じゃん!」

「ありがとう。じゃ、はい」


 無理矢理握らされるマイク。


「歌知らないって言ってんじゃん!」

「大丈夫、絶対歌える」


 言いながら、紫音が入れた曲は。


「英語だと!?」

「はい、集中ー」


 首をグイッと画面に向けられる。


「無理無理無理!」

「いいから曲聞けー」


 紫音を睨むと面白そうな顔で見られる。

 もうこうなったらやけくそになるしかない。


「適当に歌ってやる!」

「いいから聞けって」


 聞いたって分からない曲なのに歌えるわけないだろ馬鹿野郎。

 そう罵倒しようとした時何故か勝手に口が開いた。
 そして歌い出す自分の喉。


 歌いながら優羽は目を丸くしていた。


「な?歌えただろ?」

「自分でびっくり……しかも上手い」

「自分で言うなよ。確かにプロ級だって皆でいつも言ってたけど」


 しかし紫音の笑い声は優羽の耳には入ってなかった。

 上手い下手は関係なく、とにかく楽しかった。
 歌うのが大好き。
 そんな風に全身が叫んでた。