こんな能力(ちから)なんていらなかった




違うよ。

私は貴方を元気付けるために言ったんじゃないんだよ。

全て自分の為に言った嘘なんだよ。

自分のためなんだよ。

そんな優しい眼差しを向けて貰える資格、


私にはもうないんだよ。




嗚呼——

やっと分かった。



 紫音が王様じゃなくて私を選んでくれない理由。

 紫音の目が私に向かない理由。


だって、私はこんなにもズルくてキタナイ。


 紫音が好きなのは立派な王様。
 守るに値する尊敬できる女(ひと)。


比べて私は何——?


 渇いた笑いが喉にへばりつく。

 もう笑うことすら出来ない。



 最後の最後で自分で自分の首を絞めた。

 なんて馬鹿な自滅だろう。
 馬鹿すぎて庇うことなんてできない。


 終盤戦じゃ、敗者復活も期待できやしない。


 こんな大失敗した後で、どの面下げて紫音に好きだなどと告げられるのか。


 俯き続ける優羽を不思議に思ったのか紫音が手を伸ばす。
 そのことに気が付かないフリをして優羽は体ごと向きを変える。

 紫音の腕が自分に当たらないようにさりげなく躱しながら。