「紫音に……言ってなかったことあるの」
紫音は何だと顔をこちらに向ける。
「私ね、思い出したの、自分がフィリアムだった頃のこと……」
内心では期待半分面白がってるの半分くらいだった。
紫音がどんな反応するか、それが知りたくてついた小ちゃな嘘だった。
そっと紫音の反応を窺った優羽は体を強張らせた。
紫音の顔を見て
間違えた
ってそう思った。
「……な〜んてね、嘘!」
瞬時に誤魔化しの言葉を吐く。
「もしかして、期待しちゃった?」
ぺんと紫音の額を叩きながら嘯く。
心の中では必死に謝っているのに。
ごめん……ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい。
そんなつもりじゃなかったの。
ただ、私と王様を重ねてもいいから、紫音に一瞬でも好きな人を見る眼差しで私を見て欲しかっただけなの。
今日で会うのを最後にするつもりだったから、クリスマスプレゼントにしたかったの。
——そんな、哀しそうな目にするつもりじゃなかったの。
ごめんなさい……。
優羽に額を叩かれた後、少し間を開けて紫音は盛大に笑った。
「ありがとな」
そう言って優羽の頭を撫でる。


