こんな能力(ちから)なんていらなかった




「ほら、行かないともうすぐ出港するけど、……乗りたくない?」

「のっ、乗りたいっです!!」

「じゃあ、行こう?」

「……うん」


 紫音に手を引かれ乗り場に向かう。

 そこから先は全て別世界のように煌びやかに輝いていて、ディナーもなんもかんも美味しくて、時間はあっという間にすぎていった。


 美味しい食事を食べながら昨日、自分が寝てしまったあとの話を聞いた。

 angelicはみな拘束されて、京都にある特別収容所に送られたという。数が多かったため、流と奈々のどちらともが護送するはめになったらしい。
 朝起きて、二人ともいなかった理由がそれでようやく分かった。


 お腹も落ち着いいた頃に、紫音の提案でデッキにでる。


「寒っ!」

「コートも着ないで外に出るからだよ」


 紫音は笑いながらコートを渡す。
 さっき、またまた貰ってしまったボレロを脱ごうとするとそのままコートを被されてしまった。


「ちょっと!モコモコするんだけど!!」

「まんまるで笑える」


 それは太ってるって言いたいのか?

 でも、紫音がここまで笑うのも珍しいから文句も言わず我慢する。


「ねぇ……紫音」

「ん?」


 紫音が笑い疲れた頃を見計らって聞く。