こんな能力(ちから)なんていらなかった



 これ以上挑発してほしくない。
 あいつらは何を仕出かすかわからない。


 だが、少し遅かった。


「そんなにしてほしいのか?」


 壇上に立つ男は、ニヤリと笑った。

 歪んだ顔で、目で、口で。

 嬉しそうに。



 「では、死ね」



 男はゆっくりと彼に向かって手を伸ばす。

 しかし、彼は馬鹿にした顔で笑っている。


 優羽は咄嗟に彼を突き飛ばした。


 その瞬間、一筋の光が優羽の左肩を貫いた。


「うあっ……!!」


 勢い余って優羽はその場に倒れこむ。
 それを見た男は舌打ちをして優羽を睨みつけた。


「余計なことを……」

「それはこっちの台詞だっての!!」


 優羽は僅かに身体を起こすと前の男達に向けて札を投げた。


「結せよ!!」


 その札は一度バチン!と大きな音を立てた後、男達の前の空間にぺたりと張り付いた。


「……無駄な足掻きですよ」


 そう男の言う通りだ。

 今持っていた一枚の札だけでは男達全員を閉じ込めておけるだけの強度がない。
 きっとすぐに破られる。