こんな能力(ちから)なんていらなかった



 まずやらなければいけないのはクラスメイトの安全の確保だ。

 彼らは普通の人間を嫌悪の対象と見ている。
 今は優羽にしか集中していないようだが、いつクラスメイトに危害を与えるか、分かったもんじゃない。



 だからこそ、挑発せずに我慢していたのに。



「さっきから何言ってんの?意味が分からないんですけど」


 予想外の事態だ。
 まさか、クラスメイトが行動するなんて思いもよらなかった。


「穢れとか、下賤の者とか、なにそれ、なに?あんたら今そういうお年頃なわけ?中二ワード使いたいだけ?」


 
 クラスメイトの思いっきり草を生やした言い方に優羽は焦る。
 今までのまま空気でいてくれればよかったのに。というかいてほしかった。

 振り向いてやめてくれ、と必死に伝えるが彼は優羽を見ていないため気付かない。


「大体なんなのその格好?中二病?その年で?そろそろ卒業する頃だろ?」

「やめて!!」


 声をあげてもクラスメイトはやめない。


「それに処刑って何?処刑って?言い方笑える。つーかあんたらみたいなのが本当に人殺せんの?社会不適合者なくせして、そんな度胸あんの?」


 優羽は我慢できずにそのクラスメイトの口を塞いだ。
 男子は何すんだという顔をするけれど手を離すわけにはいかない。