「……貴方達に私は何をしたと言うの?」
そこから始めるしかない。
まず、何に対しこいつらが怒っているのかすら分からないのだから。
優羽の言葉に男の眉がピクと動いた。
「何をとぼけたことを…………っと、そう言えば貴方には記憶がないんでしたね、忘れておりました」
「——っ!!」
優羽は大きく足を踏み出す。
「どこでそれを——!」
“貴方には記憶がないんでしたね”
それを知っている人間は数人だけ。
クラスメイトですら知らない事実。
それを面識のなかった人間が知っているのは気味の悪いものがあった。
「そんなに大声を出さないでください、これだから下人は……品がない」
「……下人?」
聞き慣れない単語。
それに意識を移した優羽は足を止めた。
「下人を知りたいのですか?」
いいでしょう、教えて差し上げます。そう言った男のうざったらしいことと言ったら、この上ない。
何故こんなにも上から目線なのか。
優羽が顔を顰めたのにも気付かず男は話を始めた。


