さっきまで怒っていたはずなのに、その男が持つたっぷりの色気にやられて優羽の心臓はバクバクと音を立ててなる。
「唯斗って呼んでね、ブッ!」
「いつまで握ってんだ」
紫音が頭を叩いて漸く唯斗は優羽から離れた。
「手加減しろよ、たく……相変わらず心の狭い奴だな」
「お前にそのままそっくり返してやるよ」
仏頂面の紫音を見ながら唯斗はさも愉しげに笑うとまたソファに戻った。
「さっきの話の続きなんだが、してもいいか?」
「え!?……あ、うん……はい」
「堅苦しいな」
唯斗は笑うと急に真剣な顔つきになった。
砕けた雰囲気はその場から音も立てずに消える。
唯斗につられて優羽も背筋が伸びる。
「……あいつら優羽がフィリアムだと思い込んでる。近くに紫音がいたのが裏目に出た。これから奴ら本格的に動き出すぞ」
「はい!?」
意図してなかったことを告げられて身を乗り出す。
……えっと、それは、つまり?
「さっき言ったの覚えてるか?」
「……さっき?」
どれのことだろうか?


