こんな能力(ちから)なんていらなかった



 不意に目が合う。

 男はニッコリ笑うと。


「随分とラブラブだね」


 一言呟いた。


「………………ッッ」


 見る見るうちに真っ赤になった優羽は、声にならない叫びをあげてソファから飛び降りる。


「おい!大丈夫か?」


 床に顔からダイブした優羽に紫音は焦って手を伸ばす。
 だが、声に堪え切れてない笑いが混ざってる。


「笑わないでよっ!」

「……悪い」


 伸ばされた手に掴んで立ち上がると紫音の隣に腰掛けた。


「相変わらずいい反応するね」

「…………」


 愉快そうな男に優羽は少しムッとする。


「さっきから馴れ馴れしいぞ」

「ちえっ」


 思ってたことを言ってくれた紫音に優羽は心の中でありがとう!と叫ぶ。

 唯斗は改めまして、と呟くと、立ち上がり、優羽の前に跪き優羽の手をそっととった。


「朝比奈唯斗です。以後、お見知り置きを」


 チュッとリップ音をさせて優羽の手に吸い付いた男は妖艶に微笑んだ。