こんな能力(ちから)なんていらなかった



「昔、この地球がある次元とは違う場所に一つの世界があった。そこは魔法が使える不思議な世界。中でも不思議だったのは、その世界の住人に羽根を持つ者がいたことだ。
しかしその世界はその後時を経て、壊れ、そこにいた命達はその世界を追われ、ここの地球というところで新たな生を得た」


 無言で続きを促す。


「転生した者中には、前の世界の記憶を有し、尚且つこの世界でも魔法が使える
者もいた」


 もう分かるよな、と紫音が優羽の顔を見る。

 優羽は震える肩を押さえつけながら、頷いた。


「angelicは——」

「皆もう一つの世界の住人」


 特に羽根を持つ人達の、ね。と紫音は付けたした。


「……?」

「その世界には羽根を持たない人もいた。っていうか、寧ろ持たない人の方が多い。羽根を持った人は大体魔力を多く有して生まれる。そして、その人は生まれ変わった後も魔力を多く有していて、何故か生前の記憶も持っていた。それがangelic」

「……紫音も?」

「魔力もあるし、記憶も持ってる」

「でも、今まで見て来た人達は皆白かった——」


 紫音はああと呟くと「俺の一族は全員黒かった」と事も無げに言った。


 紫音がangelicと半ば分かっていたことだが、やはりダメージはある。

 自分がしていたのは紫音の同族狩りなのだ。
 紫音は本当は自分のことを憎んでいるのではないか?——そう思った途端に小さく身体が震え出す。