こんな能力(ちから)なんていらなかった



 紫音みたいな綺麗な顔の人がそれをすると凄い破壊力になるって初めて知った。

 顔を真っ赤にして黙り込んだ優羽に紫音は笑顔になっていい子と頭を撫でる。


「ここは俺の部屋」

「ホテルが!?」

「家の部屋だ」


嘘だろ?

この豪華絢爛などでかい部屋が?
紫音の部屋?


う……嘘だろ……。


「……優羽はこの部屋に来た後を覚えてる?」


 あり得ないって顔で紫音の方を見ると、紫音は呆れた表情でそう訊いた。


「?……お風呂に入ろうとして……あれ?」


 何かが変だ。

 その後の記憶が一切ない。


「……全然思い出せない」

「そうか……」


 言うと紫音は安堵したような顔を見せた。
 それとちょっぴり残念って顔。


 なんでそんな顔をしたのか分からなかった。だが、聞く前に話始めてしまったのでわざわざ訊くことはできなかった。


「じゃあ一から話すよ。長くなるからリラックスして聞いて」


 紫音はベッドから降りると優羽へ手招きする。それに従って優羽もベッドから足を下ろし、紫音の後をついて行った。

 扉を開けるとモノクロで統一された部屋がそこにあった。
 紫音は部屋の真ん中にあったソファに腰掛けると優羽を呼んだ。
 優羽も紫音の横に座ろうとして、少し悩んだ後人一人分の間を空けて座った。
 紫音がそれを見て苦笑したことに優羽は気付かなかった。


「さて、と」


 紫音の声につられて顔を上げる。


「優羽の知らない世界の話だ——」


 紫音は微笑むと優羽に構わず話し出した。