こんな能力(ちから)なんていらなかった



「なんで紫音が……」

「お前寝ぼけてるのか」


 紫音は呆れたように片眉を上げると、自分もベッドに入ってきた。

 驚きすぎて何も言えない優羽に構わず紫音は優羽の横にごろりと寝そべった。


「私は、走りに行って……あれ、angelicに会って……それから」

「優羽が呼んだんだよ、俺のこと」

「そう!紫音のこと電話で呼んで、…………!!」


 優羽は凄い勢いで跳ね起きると紫音の頭をガシリと掴んだ。


「あれはなに!?一体どういうこと!?!全部説明して貰うまで私絶対に帰らないからねーーー!」


 一息で叫び、距離を詰めてくる優羽に流石の紫音も焦った表情を見せていた。


「とりあえず、おちつ——」

「おちつけるかッ!」


 紫音が咄嗟に耳を塞ぐ。
 だが、優羽はその手を跳ね除けて叫び続ける。


「髪は黒いし、背中には羽根生えてるし……紫音ってなんなの!?」

「俺は、え——」

「しかも、あの男と面識あったみたいだし!!」

「それは、」

「てか、ここはどこーーーー!?!?」

「いいから黙って話を聞けって」


 半狂乱になりかけた優羽の口を紫音は大きな掌で包むように覆うと、人差し指でシーッというジェスチャーをした。