こんな能力(ちから)なんていらなかった



 その夜夢を見た。

 あの女の夢じゃなくて暖かい夢。



 目を閉じた瞬間、あの女はいつも通り現れた。

 恐ろしくて恐ろしくて、泣き叫びそうになった時、胸元にあったリングに気付いた。


 
紫音……。



 愛しい人の名を呼びながらそのリングをぎゅっと握りしめる。

 すると、暖かい腕が震える身体を優しく包み込んだ。



 その腕の中では怖いことなど何も無くて、優羽はそっと安らかな微笑みを浮かべたのだった——