こんな能力(ちから)なんていらなかった



「…………ないよ」

「は?」

「貰えないよっ、これ!」


 紫音は少し間を開けてからなんで?と静かに訊いた。


「だって、これ紫音の大切なものでしょ!?」

「……いいんだよ。それそんな大事なものじゃないし」

「嘘だ!」


 自分には分かる。見えてしまう。
 これが今迄どんなに大切にされてきたか。
 このリングには複雑で切ない想いが沢山こめられている。


「紫音の……大切な人との思い出の品なんじゃないの?」

「……なんでそう思う」

「だって裏側になんか彫られてる」


 リングを掌に乗せて内側を見る。

 そこには三つ何かが彫られていた。

 知らない文字だけれど、多分イニシャル。勘でしかないのだけれど。


「……私にはこれを持ってられない」

「俺がいいって言ってんだよ」

「でも、ダメだよ……」

「……いいから黙ってつけてろ」


 痺れを切らした紫音はガチで怖いのを忘れてた。


「は、はいぃぃぃ」


 紫音はフッと笑うと、優羽の鎖骨を撫でた。