司の話に寄れば、優羽の症状は崖から落ちた際岩に頭をぶつけたことに寄る記憶喪失だった。
重なる木々がクッションとなったため、優羽は奇跡的に崖の上から落下した際の怪我は切り傷、打撲、骨折だけで済んだ。
が、一つだけ致命傷があった。
銃弾が胸に埋まっていたというのだ。もう一つ脇腹にも。
六時間にも及ぶ手術の末に優羽は生き永らえた。
他にも裂傷があったらしいが、その埋まっていた銃弾の一つは心臓すれすれにあったらしい。
明らかに優羽を殺そうとしてのことだった。
——誰かに命を狙われている。
そう悟った優羽の両親は優羽を京都に転校させた。
優羽は元々東京で一人暮らしをしていた。
命を狙われていると分かった今、記憶もない優羽を一人にすることはできないという判断だった。
そして、優羽は京都で暮らし始めた。
よく若衆は優羽の元を訪れた。
優羽はよく懐いてくれた。
優羽の記憶がないことなんてたまに忘れてしまいそうになるぐらい優羽は優羽だった。
だが、やはり以前の優羽とは何かが違っていた。
優羽が度々見るという夢。
それは優羽に繰り返しあの日の惨劇を見せる。
優羽はその記憶がなんなのか分かっていなかった。


