『王子様の夢を見たの!』
『オウジサマ?……なんだそれは』
『流は王子様も知らないの?』
そう言うと優羽は嬉しそうに王子様について語り出した。
要するに白い馬に乗った異国の自分を守る強い男がオウジサマという奴らしい。
よくは分からなかったが。
『本当はサラサラのキラキラ金髪のかっこいい人が王子様なんだけどね、その人は髪も目も真っ黒でね、黒い羽を持ってたの!!』
『黒い羽?』
『うん!真っ黒〜』
優羽はきょとんとした顔で流の頭を見る。
そして後ろに突然回ったかと思うと徐に羽を掴んだ。
『流が王子様なの!?』
『……そうしたら、この山はオウジサマだらけだな……』
『ほんとだっ!王子様だらけっ!!』
あははと楽しそうに笑いながら優羽は仲間の元へじゃれに行った。
——優羽は夏の間のみ、京都の本家にいる祖父の元を訪れていたのだと言う。
夏が終われば学校も始まる。
惜しむ大天狗や若衆に優羽は来年も来ると約束し、京都を去った。
それから、約束通り毎年優羽はこの山を訪れた。
何度も来る内に優羽が祓屋の一族の者だということが分かった。
最初は言うのを渋っていたが、何せあの千歳の家の者だ。
独特な甘い香りと持っていた千秋からばれた。


