こんな能力(ちから)なんていらなかった



 けれど、後悔せずにはいられなかった。



——昨日、夢を見なければ、こんなことにはならなかった?

——自分がもう少し強ければ、流の手を借りなくてもいいぐらい強ければ、昨日は避けられた?



 今日ほど昨日のことを悔いたことはなかった。




***




「朝から酷い顔ね……」


 学校でかけられた第一声はそんな言葉だった。


「……そんなに?」

「想像以上だと思うわよ」


 葵に鏡を見せられて愕然とする。


「……一体、何があったの?」


 葵はそう訊いてくる。

 ふざけてるわけではなく、その表情は真剣そのもの。
 心の底から心配してくれていることが伝わってくる。

 けれど、自分がこうなった原因は相談するようなことではないと思った。


 全て、自分が悪い。

 そんなこと分かっているのだから。


 葵に話したところで解決するようには思えなかった。


「……ちょっと、家でね」


 微かに笑みを浮かべる。
 笑えている自信なんて無かったが、葵は追求するのをやめた。


「……なにかあったら話していいんだからね?」

「うん……ありがと」


 力なく笑った優羽に葵は悲しそうな顔をした。