『…………そう、か』
そう言った流の顔は悲しみに溢れていた。
——なんで、そんな顔するの?
優羽が反応する前に流は優羽をベッドに下ろす。
困惑した顔で見上げる優羽のことを見ることなく、流は部屋を出て行った。
引き留める間もなかった。
声をかけることも出来ず、離れていく腕を掴むことも出来ずにその背中を見ていることしか優羽には出来なかった。
流を追いかけるように部屋を出て行こうとした奈々は、優羽に気にしなくていいから、と言い残して出て行った。
奈々が乱暴に閉めたからドアはキッチリ閉まっておらず、微妙に開いていた。
その隙間から目を離すとベッドの上で優羽は丸くなった。
頭を巡るのはさっきの流の顔。
まるで刺されたかのような、苦悶の顔。
怒りでもなく、悲しみ。
怒るなら理由はわかる。
しかし、何故そんな顔を流がしたのか優羽には分からなかった。
ゴロリと寝返りを打つ。
「朝になったら、すぐ謝ろ……」
今日はきっと謝るなんてできない。
心は落ち着かないし。
頭の中はぐちゃぐちゃしてる。


