こんな能力(ちから)なんていらなかった









 誰もいなくなった部屋のベッドで優羽はぼんやりとさっきのことを思い出していた。




 ——暗闇の中でもがいていると誰かの腕が差し伸ばされた。

 それにいつものように甘えたつもりだった。


 けれど、違うと思ってしまった。


 前に感じたその腕の中と、今いる場所は全く違うものだと。



 気が付いてしまった——




『……違う』



 思ったままに呟く。

 この腕じゃない。



『——貴方は、違う!!』




私が求めているのはこの腕じゃない——!




 ハッとした時にはもう遅かった。

 目を見開いた流を見て、大変なことを言ってしまったことを知る。


 流の目が優羽の正気を取り戻させた。

 けれど、正気でいることはこの場において辛いものでしかなかった。

 無意識とはいえ、自分が言ったことは今迄支えてきてくれた流に言うには酷すぎる。

 流の目が見られない。
 心臓がよじれるように痛い。


『……、あ……』


 上手く唾が飲み込めない。

 異様な空気に優羽は耐えきれず、口を開く。が、何も言えなくて閉じるを数回繰り返す。

 無言だった空気を破ったのは流の言葉だった。