こんな能力(ちから)なんていらなかった



 優羽は一瞬躊躇うような顔をしたが、すぐにその棒を噛んだ。

 ポキンといい音がした。

 紫音は半分になってしまったポッキーを自分の口へ運ぶ。


「まぁ……俺はこういう時しか食べれないからな」


 優羽は紫音のセリフに引っかかりを感じたが、追求することなく自分の善哉をモグモグする。


「美味し〜い!」


 わらび餅の歯ごたえがなんとも言えない。
 笑顔でそれを食べていると視線を感じて顔をあげる。


「どしたの?」

「……いや、なんでもない」


 それだけ答えると紫音は顔を背けた。
 優羽はその紫音の様子を疑問に思う。

 いつもと違うってのは分かるのだが、怒ってる様子でもない。

 しばし考えた後優羽は紫音にわらび餅を差し出していた。


「なにこれ?」

「……食べたいんじゃなかったの?」

「は?」


 紫音お得意のは?が出た。

 優羽は違ったかと自分の口へわらび餅を運ぶ。
が、そのわらび餅を口に入れる前にその手を紫音が掴み、紫音の口の方へと持っていこうとした。


「何してんの!?」

「なんで、お前が食おうとしてんだよ」


 そう言ってから紫音はわらび餅をほおばった。

 優羽は自分で差し出しておいて頬を染める。


 なんかカップルみたい——


と思ったからだ。