こんな能力(ちから)なんていらなかった




「知りたい?」

「……ィェ」


 笑顔の紫音が怖すぎて聞く気になれない。


 賢明な判断だ、そう言って紫音は優羽の頭を撫でた。


 優羽の手を引いた紫音は指定された番号のシアターに足を進める。
 中は予想以上にでかく、テレビの中でしか見たことのない規模だった。


「舞台挨拶とかあるのかな?」

「さぁ?」


 そんなことを話していると紫音がそこ、と指差した。


「めっちゃ特等席じゃん……」


 指差した席はまさにど真ん中、後ろすぎず、前すぎず、丁度いい場所だった。ついでにいうと自分の前は広めの通路。邪魔な前の席もない。


「どうやってこんな場所手に入れたんだよ……」

「内緒」


 口先に指を当ててshiーと囁いた紫音が余りにも、なんていうか、……セクシーだったもんだから優羽は顔を赤くして黙り込む。
 ストンと腰を下ろした優羽の隣に紫音も腰を下ろす。


「ほら、これ塩。こっちはキャラメル。でこれはお前のアイスティー、ガムシロとレモンも貰っといたから」


 手際良く自分の頼んだものをこっちにくれる紫音の腕をぼんやりと見つめていた。