こんな能力(ちから)なんていらなかった




 そんな状況で人の鼻を摘まむことのできる紫音のバランス感覚に脱☆帽だね。


「で、こちらの方達は?」

「……一期一会を大事にする人達?」

「……どうゆうこと?」

「つまり、ナンパって奴?」

「はぁ?」


 ヒイッと心の中で悲鳴を上げる。

理由:紫音の顔が一瞬で般若になったから


 しかしそれは紫音が小声で糞が、と吐き捨て、優羽を自分の背中側に庇ったことから、自分に向けられたものではないと瞬時に悟った。優羽はホッとした表情を見せ、胸を撫で下ろす。




「すいませんが、これは私の連れなので」


 青い顔で立ち尽くす二人に紫音は続ける。


「目障りです、今すぐ目の前から消えてください」


 紫音は丁寧な言葉で何やら物騒なことをおっしゃってらっしゃる。

 紫音の顔は後ろからだから見えない。けれど、発するオーラに優羽は一人背筋を凍らす。
 それを前から受け止めている二人の心中はいかようなものだろう。


 では、と紫音が優羽と向き合った瞬間に二人組はつまづきながらその場から逃げて行った。


「……人目があると何もできやしない」

「いや、十分やってたよね」


 優羽はフハッと笑う。
 あの脅しで何もできてないと言うのなら人目がないところでは一体何をするというのか。