こんな能力(ちから)なんていらなかった




「にひゃkむぐぅっ!」

「何故、叫ぶ」


 値段を叫びそうになった優羽の口を紫音が抑える。

 男らしく骨張った紫音の掌の面積は広く、口と鼻が一遍に塞がれる。


 つまるところ、

呼吸が満足に出来てない。


 ギブギブと紫音の手をビシバシ叩く。

 もう叫ばないからと目で訴えると紫音はすぐに手を離した。


「……殺す気?」

「不慮の事故だよ」


 悪びれずに奴はそんなことを言う。


「……で、その時計はバッタもんの安物?」

「どう見える?」


 無言のまま紫音の腕時計を見つめる。


「そもそも俺みたいな只の高校生がそんな高価なものつけられる?」


 プルプルと頭を振る。


「じゃあ、騒ぐ必要は無いって分かるよな?」


 コクコクと頭を振る。


「よし、じゃ行くか」


 グイッと腕を引っ張られるままに着いていく。


「こっから遠いの?」

「いや?すぐだよ」


ほら、もう着いた。


 そう言って紫音は大きな建物に入っていく。


「何味がいいんだ?」


 意味が分からないと目で訴えると、ちょいちょいと向こうを指す。