こんな能力(ちから)なんていらなかった




 人一人分。
 それが自分達にとって丁度いい距離。


 間違っても手の繋げる場所に踏み入ってはいけない。


 でもそれは仕方のないことだ。
 今の優羽は紫音にとって友達でしかないのだから。

 隣に並べるのは紫音が自分を選んでくれたその時。
 それまでは、自分にここに立つ資格はない。


————って確かにそう思ったはずなのに、紫音が


「左手あいてるんだけど」


なんて意地の悪そうな顔で手を見せつけるように降ったりなんかしてたら、


自分の右手を叩きつけるしかない……よね?


「素直でよろしい」

「……なら褒美としてポップコーン奢って」

「考えといてやるよ」


 買ってくれないんかい!って思ったのは絶対に内緒だ。


 駅まで徒歩五分、電車に揺られること二十分、目的の駅に着いた。


「ちょっと早かったかもな……」


 紫音が腕時計を見ながら呟く。
 その時計から漂う高級感。

 たまたまそれを見た優羽の動きは止まる。


「ま……待って」


その時計は……、確か。



 優羽の父親が欲しいと呟いて、母親に吹っ飛ばされていたぐらいの額の——