こんな能力(ちから)なんていらなかった



——だって、紫音は仕事で忙しいんだからしょうがないよ……!


 自分の中の恋愛脳はそんな言い訳をかましているが、非常識であるのは変わらない事実。

 まぁ、でも紫音だからいっか。と思ってしまっているのも事実。


 恋は人を現金にするらしい。

 初めて知った。


——で、紫音は何て言ってるの?


 恋愛脳が口を出す。


——早く見なさいよ!


……なんだ、この子五月蝿い。


 優羽は恋愛脳のイメージを脳内から消去すると、携帯に意識を戻した。




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前に優羽が見たいって言っ
てた試写会のチケットが手
に入ったんだけど

行く時間ある?

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 瞬時に行く!と返事を返す。

 するとすぐにまた携帯が震えた。



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食いつきいいな(笑)

それ11/20なんだけど
予定大丈夫か?

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 それは来週の日曜日だった。

 予定は今のところ特になかったはず。


 頭の中で確認した後、平気と返した。



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朝11時頃迎えに行くから
待ってて

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 了解と送ったすぐ後、優羽の体は電池が切れたようにベッドに倒れこんだ。

 半ば夢の中だった頭を無理矢理覚醒させたのだ。眠気なんてすぐに戻ってくる。


……もう限界。


 瞼を閉じた三秒後にはもう何も考えられなくなっていた。