こんな能力(ちから)なんていらなかった



 ふーと息を吐き出す。


「紫音は忙しいっていうのに、迷惑かけて」

「にゃぁ」


 嬉しかったくせにと言いたげな目だ。


——確かに嬉しかったけども。


 それとこれは別問題だ。


「……なんかお詫びしなきゃね」


 お菓子でも焼こうかなと呟くと奈々は優羽の胸に猫パンチした。


「ちゃんと奈々の分も作るよ」

「みゃあ♪」


現金な奴だなぁ。


 優羽は指で奈々をじゃらす。


「それにしても……」


 何で紫音のそばは落ち着くんだろう。

 黒髪なんかではないというのに。


「“もっと望んでもいい”ねぇ……?」


 奈々が尻尾揺らしながらこっちを見る。
 紫音の言うようにもっと望むことが許されるなら。


「紫音が欲しいってのは望みすぎかなぁ……?」

「にゃー」


 奈々は相も変わらず鳴くばかり。

 そんな奈々の喉を擽りながら思う。


——紫音が私を選んでくれればいいのに……。


 いつからそんな傲慢な願いを自分は抱えるようになったのだろう。

 けれど、もう誤魔化せない。
 これが自分の本音なのだから。

 優羽は心の内に生まれてしまった欲に溜息をついた。